[デザインで考慮すべきUX手法] 1 – 競合分析(Competitive Analysis)

原文:Competitive Analysis: Understanding the Market Context by by Jason Withrow (February 27th, 2006)
出典:http://boxesandarrows.com/competitive-analysis-understanding-the-market-context/

サービス企画/デザインで考慮すべきUXチェックリストのうち、最初のテーマとして「競合分析」を紹介したいと思います。
「競合分析」は主にサービス企画の序盤において、競合他社の戦略やサービスを把握し、試行錯誤に要する時間を最小限に抑え、自社サービスの競争力を再考する有用な手法です。

競合分析の概要

サービスを成功に導くために、私たちのサービスが競合することになる市場やユーザー、そして競合他社の戦略、核心的な提供価値など、関連産業全般にわたる脈絡について理解する必要がある。競合分析はこのうち私たちがマーケットシェアを分け合うようになる競合他社と彼らのサービスに対する分析である。競合分析を通じて、競合他社がユーザーに提供している詳細価値を相互比較し、どのような価値を共通的に提供しているか、どの部分を注視すべきかなどを洞察することができる。また、彼らの経験した失敗は回避して短時間でユーザーに親和的なサービスを提供できる。これは競争力のあるサービス戦略を策定するために必要な分析手法である。

競合分析の実行方法は大きく定性的アプローチと定量的アプローチに分けることができます。定性的アプローチでは、競合他社がサービスをどのような情報で分類してコンテンツを構成しているか、ユーザー経験が視覚的に適切に反映されているか、などについて比較/分析をし、自社サービスの強みと改善範囲を算定する参考資料として活用されます。一方、定量的アプローチは通常、他サービスと比較して自社サービスの質的優位性を評価したり、ユーザーが感じる使用性に対して具体的な指標を設け、効果的な宣伝方法を模索する根拠資料を作成する際に用いられます。

1.はじめに

私たちが提供しているサービスをより効果的に企画/設計するためには、サービスを提供している市場の全体的な流れを理解する過程が必要です。たとえば、ユーザー中心のデザインを考慮するとき、ユーザーのニーズや特定タスクにのみ焦点を当てたり、メニューの情報位階(IA)を設計して、用意されたコンテンツのみに焦点を当てるだけでは十分ではありません。

何がさらに必要でしょうか?

それはまさにそのサービスが使用される環境、つまり私たちのサービスが存在する市場への理解が必要になります。これはサービスの複雑さを問わずすべての場合で当てはまるでしょう。

下図は、サービスが提供する主なコンテンツとユーザーのニーズ、環境の関係を表しています。

ここでは、私たちが競争することになる競合他社のサービスと戦略、市場環境に焦点を当て、RosenfeldとMorvilleがまとめた3つの側面のうち「脈絡」の部分を集中的に調べてみたいと思います。

2.競合分析の役割とメリット

競合分析は、私たちが提供するサービスが属する市場において、シェアを分け合うことになる競合他社の分析を意味します。これは業界をリードしているTop5の競合他社を細かく分析したり、市場に分布している様々な競合他社に対して幅広く分析するのが通常で、分析を通じて下記の4つの側面で利点があります。

2-1. 競合分析の主な利点 | 競合他社がユーザーに提供している主要価値と付加的努力を把握して、自社サービスの競争戦略を樹立できます。
競合他社がどのようなサービスを運営しているか、ユーザーにどのような価値を提供しているか、競争上の優位性を維持するためにどのような努力をしているか、などを把握できます。また、この分析から得られた結果は、今後、私たちが戦略的にサービスを企画する上で有用な資料として活用できるでしょう。

2-2. 基盤知識の習得 | 分析過程で付加的に収集された情報を使って当該分野の基盤知識が得られます。
私たちが企画しているサービスと当該産業の基盤知識が拡張できます。競合他社や競合サービスを分析すると、意図せずコンテンツや機能の付加情報に自然と接することができます。長期的に見てこの分析手法は、当面のプロジェクトだけでなく、今後同じ分野のプロジェクトを進行する際、プロジェクトを成功へと導くことでしょう。

2-3. 提供サービスベンチマーク | 競合他社が共通的に提供しているサービスの属性を把握し、それらの問題点を分析することで、同じ過ちを回避できます。
どのようにすれば上手くサービスを作れるか、各競合サービスでどのような共通価値(コンテンツや機能、インタラクションなど)を提供しているか、競合サービスを分析するとそれらがよく理解できます。また、競合サービスが特定のコンテンツや機能を共通的に提供している場合、ユーザーは自社サービスにおいても同様なものを期待すると予想できます。

どうすれば、ユーザー経験の質を高められるでしょうか?

大半の競合サービスで似通った質的レベルの情報を提供している場合、ユーザーはコンテンツそのものよりも、サービスの構造やデザイン、インタラクションなどの機能性に目を向けることがあります。競合分析から取得できるもう1つの利点は、競合他社のミスを踏襲する必要がないことでしょう。分析結果から彼らが経験した試行錯誤を回避し、より効率的な実行プロセスを得ることができます。例えば、私たちが膨大な分量のコンテンツを有するサービスを企画/設計している場合、競合サービスがどのようにコンテンツを組織化し、それぞれの名称を定義しているか参考にできるでしょう。

2-4. 可能性の拡張 | 競合分析に依存するよりも、さまざまな意見を集約して新しい可能性を追求しましょう。
自社サービスの戦略的な方向性を定める際、競合分析で収集したデータがどのような意味を持つか、他部門のメンバーと議論しながら拡張することができます。競合他社は様々な方法でユーザーの意見を収集し、これらを基にサービスの方向や詳細要素を作っていくでしょう。しかし、暗黙的に定められた特別な基準がないか確認したり、新たにブームになっている分野であれば全く新しい方法を考えるのもよいでしょう。ユーザーニーズが集中するもの、新しい方法でアプローチするもの、など様々な可能性があることを覚えておこう。

3.定性的アプローチ

競合分析で得られたデータは、常に定量的データと定性的データから構成され、各データはそれぞれ価値ある役割を果たしています。
このうち以下の4つの定性的アプローチから、競合他社のサービスをどのように迅速に分析できるか、調べてみよう。

3-1. トップリスト | 上位レベルのリストだけでも競合サービスの主要機能とコンテンツを迅速に分析できます。
競合分析において先行すべきものは、上位レベルのコンテンツと機能性を分析する、ということです。サービス内に様々なレベルが存在する場合、常に質問は「上位レベルの項目」に集中します。URLアドレス、メタデータなど、重要度の低いデータを分析するよりも、主要ページのタイトルや機能の名称、主要コンテンツに関する簡単な説明や要約情報といった上位レベルの項目に集中しましょう。

以下の表は、競合サービスが有する上位レベルのリストと、それぞれに含まれるサブコンテンツを表したものです。このプロセスを通じて様々な競合サービスの主要項目を相互に比較分析し、自社サービスのコンテンツ項目をどのように定義する必要があるか考察できます。

3-2. コンテンツの分類とタイトルの定義 | コンテンツの性格と優先順位によってこれらを分類し、適切なタイトルをつけましょう。
大量コンテンツを有するサービスを企画する際には、単にリストを羅列するだけでなく、コンテンツの性格と優先順位に基づき、これらを分類して適切なタイトルを付与する必要があります。このとき、ユーザー調査から競合サービスの各項目のタイトルがユーザーにどのように認知され、適切に分類されているか考察できます。

※深層的なユーザー調査が難しい場合、Confirmatory card sortテストによって、ユーザーが自社サービスのタイトルを分類し、サービス項目と同じように認知されているか確認することもできます。

3-3. デザイン分析 | ユーザー経験が視覚的に適切に反映されているかを分析します。
競合サービスのデザイン分析から、ユーザー経験の要素がうまく反映されているか、サービス構成の専門性、信頼性、使用性が適切に反映されているか評価できます。
ex. 解像度によって画面構成がどのように表現されるか、水平方向/垂直方向のスクロールバーの量が適切に表現されているか、などの相互比較/評価

3-4. 強みと改善の範囲 | ユーザー経験の調査方法論を用いてサービスの競争力を強化し、失敗ケースを削減します。
ユーザー経験をもとにサービスの強みを定義して改善範囲を設定するのは、競合サービスを分析する上で非常に有用な出発点です。ただし、競合分析が経験的(Heuristics)評価方法に代わるものではありません。

※経験的調査方法論:代表的なものとして、Jakob Nielsen「使いやすさとヒューリスティック」、Bruce Tognazzini「インタラクションデザインの原則」などがある
※Heuristics:経験をもとにより良い答えを探していく行動を研究する学問

経験的調査方法論の典型的な検討項目

· 効率的なカーナビ構成
· 構成の明確性
· 明確な名称定義
· 一括されたデザイン
· ユーザーの期待を反映
· 効果的な視覚デザイン
· 可読性とターゲットユーザーが見分けられる認知性
· ユーザーの円滑な実行促進
· ヘルプ提供

経験的調査方法によって定義された「強み」から、サービスの競争力と改善の可能性を見極めることができます。「改善範囲」は現在把握している競合サービスの不十分な部分や回避すべきリスクを把握/改善することで、戦略的な競争優位性を持つことができます。
※競合サービスの画面をキャプチャして長所・短所を相互比較する方法も有用

4.定量的アプローチ

4-1. ランクと評価 | 共通の評価基準を策定して競合サービスを比較分析し、さらに自社サービスの質を評価します。
ユーザー経験に基づく調査方法論から、競合サービスの評価項目の定義、項目別点数を合算して順位と評価を算定します。
ex. サービスリニューアルの場合、既存バージョンと新バージョンを比較し、改善程度を証明する資料として活用できる

4-2. 使いやすさ | 様々な指標を用いて実ユーザーの使い勝手を把握できます。
分析ツールから、ユーザーのサービス滞留時間、お気に入りページまでのクリック/タッチ数、目的ページへの移動経路、エラーと成功率といった様々な指標を利用して使い勝手を評価できます。
ex. サービスリニューアル時の「ランキング/評価」と同様に、既存バージョンと新バージョン間の改善程度を容易に確認できる

4-3. 流入チャネル分析 | 競合他社の具体的なサービスの宣伝方法を分析できます。
検索エンジンのランキングは、新規ユーザーの流入と直結した重要な部分なので見逃してはいけません。検索エンジンの分析から、競合他社の順位を確認し、検索の優先順位を維持するために注力していることを把握して、自社サービスに適用する必要があります。さらにポータル検索以外にどのようなユーザー流入チャネルを提供しているか確認をして、これに対する戦略を用意する必要があるでしょう。
ex. 各サービスで共通、または特化したキーワード、バナー/メール広報

5.まとめ

✓比較/分析によりサービスの完成度を高める
競合サービスとの特徴的な差異を減らして完成度の高いサービスを作るために、競合サービスが提供している様々な価値を比較/分析し、改善ポイントを減らしていく必要があります。

✓使用性とインタラクション、審美性によって勝負が分かれることもある
競合サービスが提供しているコンテンツで、質的、機能的に違いがない場合、ユーザーはより使い勝手がよく、インタラクション、デザインなどに重点を置いているサービスを選択することがあります。このような傾向は最近増加していますが、競合サービスがデザインと使用性の問題にどのように対処しているかを分析すると、難なく解決できます。そのためにはサービスの企画前から競合分析を通じて、実際のユーザーがどのような視点でサービスを選択しているか正確に把握し、戦略的に競合サービスと差別化を図るように努めましょう。

✓競合分析は、プロジェクトの性質によって、アプローチが異なることがある
一般的に、実行要約書や重要度別推奨事項、調査結果をまとめたリスト/表、ユーザー調査結果等のローデータを活用しますが、プロジェクトの特性によって、適切なアプローチを選択することが重要です。そのためどのような情報に価値があり、どのようなアプローチが適切か検討しましょう。

競合他社とその市場をどのように理解して分析すべきか、について紹介しました。「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」の言葉のように、私たちが持っている能力を認知して、競争相手を分析し、効果的な戦略を策定すれば、市場で競争優位性のあるサービスを作ることができると思います。

次回は「ユーザーフィードバック」をテーマに、効率的なユーザー調査の方法論について紹介します。

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