ディスプレイ広告の理解

システムを開発する上で技術と同様に重要なものがドメインに関する知識です。広告システムを開発することも例外ではありません。プログラムを作成するよりも、ドメイン知識がもっと重要で困難なこともあります。今回はオンライン広告のうち、ディスプレイ広告の基礎的な知識を紹介したいと思います。

ディスプレイ広告とは?

ディスプレイ広告は、ウェブサイトでユーザーに公開される広告を意味します。ディスプレイ広告は、ポータルサイトのメイン画面やニュースサイトでよく見られるもので、私たちが最も多く接する機会があるオンライン広告の形態であると思われます。下図は、Yahoo!に挿入されたディスプレイ広告です。

(Yahoo!のディスプレイ広告, 出典:Yahoo!

Facebookのタイムラインの右側に表示される広告もディスプレイ広告です。

(Facebookのディスプレイ広告, 出典:Facebook

オンライン広告では、ディスプレイ広告のほか、検索広告と呼ばれるものもあります。検索広告は、検索エンジンの検索キーワードに関連する広告主のサイトを検索結果に含めて表示します。GoogleやYahooが代表的な検索広告会社です。(代表的なディスプレイ広告会社でもあります。)以下は、Googleで「4kモニタ」と検索したときに表示される検索広告です。

(Googleの検索広告, 出典:Google

ディスプレイ広告という言葉は聞き慣れませんが、これ自体は常日頃、私たちがよく目にしているものです。

この記事で登場する用語

広告市場は用語も多く、かつ概念も多い分野です。しかし以下の用語さえ覚えておけば、この記事を読む上で支障はありません。

用語 意味
インベントリ(inventory) パブリッシャーのサイトの広告領域
パブリッシャー(publisher) ニュース、ブログなどの媒体を所有している事業者
広告主(advertiser) 広告を執行して、その製品を販売しようとする事業者
露出(impression) ユーザーが広告に公開されること(パブリッシャーのサイトに接続)
CTR(click through rate) 露出された数のうち、クリックされた回数の割合

ディスプレイ広告の発展

ディスプレイ広告がどのように変遷してきたか、ディスプレイ広告を理解する上で役立ちます。

直接契約(Direct Partnership)

初期の広告は、広告主とパブリッシャー(ニュースサイト、ブログなど)が直接契約を締結する形態を取っていました。広告主が広告バナーを提供すると、パブリッシャーは自分のホームページにこれを挿入するといった方法です。

このような形態の契約は簡単ですが欠点があります。パブリッシャーは、次のような困難を経験することでしょう。

  • ニュースサイトは1日に数十件の記事を作成する。広告契約やバナー画像が変わるたびにホームページを修正するのは、あまりに面倒である。
  • 広告スペースを放置する危険性がある。広告主と契約した露出回数以上にページ要請があると、ニュースサイトは広告販売の機会を逃すことになる。

広告主も直接契約形態は楽ではなく、次のような不便を強いられます。

  • 1つのサイトにだけ自分の広告を載せる広告主はいないはず。契約しているサイトが増えるほど、管理業務が増加することになる。

広告ネットワーク(Ad Network)と広告エクスチェンジ(Ad Exchange)の登場

直接契約の不便さは、広告ネットワークが生まれるきっかけとなりました。広告ネットワークは、広告主とパブリッシャーを仲介します。1つの広告ネットワークは、複数の広告主とパブリッシャーを含みます。広告主は、個々のサイトを管理しなくても、様々なインベントリにアクセスできるようになり、パブリッシャーも様々な販売機会を得られるようになりました。

しかし、広告ネットワークも限界がありました。広告ネットワーク度に重点を置く分野が異なるからです。あるネットワークは動画サイトのインベントリを多く確保しており、また、あるネットワークはブログインベントリをたくさん所有しています。大量の在庫を保有しているネットワークがある反面、良質なインベントリを有するネットワークもありました。そして、個々の広告ネットワークだけでは広告の流動性を確保するのが困難で、時には需要が溢れ、時には供給が溢れることもありました。こうしたことから、自然とネットワーク同士が露出やインベントリを売買する取引が生まれ、広告ネットワーク間の取引を仲介する広告エクスチェンジが登場するようになりました。

RTB(Real Time Bidding)

RTBはリアルタイムで在庫の購入に参加することを意味します。過去のオンライン広告市場は、在庫を事前に購入するといった具合になりました。一方で、RTBは潜在的な顧客が広告に露出される度、インベントリをオークションにかけます。RTBを利用したオンラインマーケティングは、インベントリを対象とするのではなく、潜在的な顧客を対象とするものです。RTBをサポートする広告エクスチェンジは、ユーザーの露出が発生する度に広告主にインベントリを購入するかどうか尋ねます。広告主は、この露出を分析して、自分の製品を販売できる機会がきたと思えば値付けに参加します。広告キャンペーンは多くの場合、CTRで評価されます。2011年、Googleの発表文書によると、2011年4〜5月のマーケティングキャンペーンを分析した結果、non-RTBキャンペーンのCTRが0.09%であるのに対し、RTBキャンペーンは0.15%で0.06%上昇しました。それほどRTBはディスプレイ市場の効率を高める新たな広告取引方法になりました。広告業界のリーダーは、IAB(Interactive Advertising Bureau)という団体を通じてRTBを標準化しました。その成果物がOpenRTBです。ちなみにOpenRTB標準によると、値付けの結果は100ms以内に出さなければなりません。私たちが一日にどの位の広告を見ているか考えてみましょう。広告エクスチェンジ事業者になることは、技術的にも容易ではないことが分かるでしょう。

ディスプレイ広告の生態系

広告主とパブリッシャーが直接契約をしていた時代には、広告主、パブリッシャー、代理店だけが広告市場を構成していました。最近では、ディスプレイ広告が進化し、広告市場のプレイヤーも細分化されました。広告市場の両端を構成するのは、依然として広告主とパブリッシャーですが、最近は1つの広告が、広告主のサーバーからパブリッシャーのサイトに到達するまで、多くの参加者が介在します。下図は、最近のディスプレイ広告市場をよく表現しています。

(Programmatic Buying, 出典:iab.com

ここでは、広告エクスチェンジ、DSP、DMPに限定して簡単に説明します。

広告エクスチェンジ

広告エクスチェンジは、露出、インベントリの売買市場です。次のような機能を提供して取引手数料を受け取ります。

  • さまざまな広告ネットワーク連動
  • RTB APIを提供

広告エクスチェンジは、信じられないほど多くの取引量を消化する必要があり、RTB APIをサポートするため厳しい規格に準拠しています。

DSP(Demand Side Platform)

広告市場での商品は在庫、つまりパブリッシャーが持っている広告領域です。パブリッシャーがプロバイダ(Supply Side)であれば、広告主(または広告代理店)は消費者(Demand Side)の市場です。広告主は、当然執行する広告が高い成果を出すことを期待されます。DSPは、そのために次のような機能を提供しています。

  • 複数の広告エクスチェンジとの連動
  • 複数のデータプロバイダとの連動
  • Real Time Bidder

DSPは効果的な取引のためにデータプロバイダと連動します。データを利用して広告を取引する代表的な事例がまさにリターゲティングです。Gマーケットのような電子商取引サイトで商品を見て回った後、購入はせずにニュースサイトにアクセスすると、自分が見た商品がニュースサイトのバナーに表示されることがあります。ディスプレイ広告では、このようなマーケティング手法をリターゲティングと呼びます。リターゲティングは、他の広告に比べてCTRがはるかに高くなります。

DMP(Data Management Platform)

上図は、DPMと表示されていますが誤りのようです。Web上でのユーザーのデータは、Cookie IDで収集されます。DMPは収集されたデータを保持して管理するだけでなく、収集されたデータを分析して、ユーザーの人口統計学的な情報や、興味などを抽出します。DSPは、値付けに参加したときの露出を分析して、製品が売れる機会かどうかを判別します。このときDMPで提供される情報を使用します。DMPは、ユーザーのデータを多く収集するほど、より正確なユーザー情報を抽出できます。GoogleやFacebookのような企業が先行している理由も収集したデータをもとに、正確なマーケティング情報を提供するためでしょう。

ここまで、ディスプレイ広告市場の主要な貢献者である広告エクスチェンジ、DSP、DMPについて調べました。参加者の役割に応じて区別して説明しましたが、実際は1つの企業が複数の機能を同時に実行する場合があります。1つの企業が、上記のすべての機能を提供したり、DSP業者がDMP機能を提供する場合もあります。

広告は、インターネット業界で最も大規模なビジネスの1つです。狭くて浅い内容ですが、インターネット広告市場を理解するのに少しでも助けになれば幸いです。

TOAST Meetup 編集部

TOASTの技術ナレッジやお得なイベント情報を発信していきます
pagetop